第62章 恋から愛へ《21》
診やすいようにと、家康は私の踵を軽く持ち上げ、自分の足の上に私の足を乗せ、怪我の状態を診る。
「ひどい怪我はないけど、擦り傷だらけだね。一応薬塗っとくから。」
そう言うと、薬箱から薬を取出し私の足に塗り、テキパキと包帯を巻いていく。
「(さすが…手際がいい。)」
あっという間に、手当てが終わった。
「ありがとう…」
「別に、これくらいのことで、お礼言わなくてもいいから」
言いながら、片付けをする家康。
「「………」」
「(あれだけ家康に会いたかったのに…)」
これといった話題がないため、何を話していいか悩んでしまう。
「(……もう行っちゃうかな…)」
片付けが終わり、薬箱の蓋をパタンと閉める音が聞こえた。
手当てが終われば、家康がここにいる理由はない。
「(こっちに戻る前に、想いを伝えるって決めたんだから…!)」
勇気を出して
「…いっ」
「陽菜」
……………
家康に遮られた。