第60章 恋から愛へ《19》
……………
………
「…ん……」
「陽菜さん、大丈夫かい?」
目を開けると、佐助くんの心配している顔が見える。
「大丈夫……ここは?」
「…どこかの城の庭だな。何かわかるものがあるといいが……あ、陽菜さん。濡れてるんだけど、白衣を羽織ってて。この時代だと、現代の格好は少し目立つ。」
白衣で少しはジロジロと見られるのも、マシになるかもしれないから。と佐助くんは白衣を脱いで、私に渡してくれた。
私の鞄も持ってくれて、佐助くんの白衣を羽織ろうとしたとき…
「っ!お前!何者だ!?!?」
廊下の奥から、武士数人がやってきて、佐助くんが私の前に立ち、私の姿を隠す。
「いえ!決して怪しいものでは…」
「何言っている!奇妙な格好をして、その手に持っているものも……十分怪しい!!」
カチャリ……
刀に手をかける音が聞こえ、ビクリと体が震え、肩に掛けた白衣の前開きのところをギュッと握る。
すると……
「何事だ」
え…この声……
「御舘様!怪しい男が、侵入してきましてっ!」
御舘、様?…もしかして…?
「いえ…確かに怪しく見えるかもしれませんが、怪しくないです…」
武士を下がるよう指示だした声に、聞きおぼえがあり、顔を覗かせて確認しようと思ったとき
「佐助くん!?」
!?
「やぁ、香菜さん。久しぶり。」
やっぱり……
「……お姉、ちゃん…」
佐助くんの後ろから出て、お姉ちゃんを呼んだ。