第59章 恋から愛へ《18》家康side
香菜が持ってきてくれた、お茶とお茶菓子で、軍議を少しだけ中断していると
「香菜、修繕が終われば、俺の新しい羽織を仕立てろ。時間がかかっても構わん。」
「え?私でいいんですか?」
「構わん。貴様の針子の腕はいいと聞いている。出来上りを楽しみにしておこう。」
「っ!はい!」
信長様が楽しそうに笑みを浮かべ、香菜も嬉しそうに笑う。
「では、私はそろそろ戻りますね。軍議中に長々とお話ししてすみません。」
「香菜、あまり無理はするなよ。こまめに休憩を挟んでだな……」
「……秀吉、その辺にしておけ。」
秀吉さんのお小言が始まりそうになるのを、信長様が止め、香菜は口に手をあてクスクス笑う。
「では、私は失礼します。」
香菜が立ちあがり、襖を開けると
サーーー………
朝はあれだけ晴れていたのに、そこまで強くないが、いつの間にか雨が降っていた。
「………雨…」
香菜がポツリと言葉を溢し、懇願するような眼差しで空を見る。
そして俺も、雨が降る度に陽菜が戻ってくることを期待している