第58章 恋から愛へ《17》
「はぁ、はぁ、はぁ……」
カツン!カツン!カツン!………
コンクリートにヒールがあたる音を聞きながら、街中を走る陽菜。
ヒールで走っているから、足全体が痛くなっているけど、そんなことも気にせず、ただひたすら走っている。
信号にひっかかっても、立ち止まらず、もうひとつ先の横断歩道まで走り、信号が変わった瞬間に走るスピードをあげ、向こう側に渡る。
お昼も終わってだいぶ時間もたった頃、昼休憩するサラリーマンやOL達の姿はあまり見ないが、やはり観光地、京都。
観光客がいっぱいで、ほとんどがゆっくり歩いている人達。
人にぶつからないよう、人の波を避けながら、陽菜は佐助からの電話の内容を思い出す。
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明日からの連勤のために、晩ごはんのおかずのストックを作っていると、スマホの着信音がなり、手を止め、急いで電話に出た。
「もしも……」
「陽菜さん!良かった!今、どこにいるっ!?」
電話口から聞こえたのは、珍しく焦って早口の佐助くんの声。
「家だけど……もしかしてっ!?」
「すぐに本能寺跡地まで来て!あと30分くらいで、ワームホールが開く!」
「っ!すぐ行くね!!」
電話を切り、エプロンを体から取る。
スマホと財布、二つの御守りを、金米糖を入れた鞄に入れて、今日履いていた黒いパンプスを履いて家を飛び出した。
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「……っはぁ…はぁ……」
息が乱れながらも、陽菜は本能寺跡地まで、ひたすら走る。
空は、だんだん雲行きが怪しくなってきた。