第57章 恋から愛へ《16》家康side
「信長様!お戻りお待ちしていました!ご無事で何よりです!」
「皆さん、おかえりなさい!」
顕如討伐を勝利に納め、信長達は戦から帰り、城門で秀吉と香菜に出迎えられた。
「秀吉、出迎えご苦労。香菜、無事だったのだな」
信長が笑みを浮かべ、二人に声をかける。
「…はい。こちらにきて三月半、信長様たちが出陣してから、嵐は起きませんでした……」
「…そうか」
香菜のその言葉で、信長達は陽菜が戻ってきていないことを瞬時に理解した。
陽菜が居なくなって二月が過ぎたところ
小雨程度の雨は降っても、あの嵐のような雨はまだ降っていない。
「今宵は宴だ。」
「なら、俺が腕を振るって、上手い飯食わせてやるよ。」
信長と政宗の言葉で、兵達はワッと盛り上がる。
武将達と兵達が城門をくぐり、城に入って行くが、家康だけその場に立ち尽くす。
先ほどの兵達の盛り上がっていた声も、家康には聞こえず、ただただ空を見上げていた。
そこは、出陣する前日と同じ、雲ひとつない晴天だった。
少しの間、空を見上げていた家康は、雨が降りそうにない天候に、ため息を溢し城門をくぐった。