第55章 恋から愛へ《14》家康side
「家康も先陣をきりたいとは珍しいこともあるもんだな。では、俺は後衛を守るとしよう。三成、お前も手を貸せ」
「はい、光秀様。よろしくお願い致します。」
三成が光秀にニコリと笑ったとき
「話は終わったか。早く開戦しろ。姫鶴一文字が待ちくたびれてる」
白馬にまたがった謙信は、すでに刀を抜き放っている
「軍神は早く刀を振りたいみたいだな。」
「俺たちの足、引っ張んないでよ。」
「そんなことはあり得んな。まぁ、手違いでお前たちを斬り落とすことはあるかもしれんが」
「そろそろ始めるか。あまり長いこと待たせるのも良くないだろう」
「そうですね」
家康は胸元から、香菜から預かった陽菜の御守りを取りだし、
「(陽菜、この戦が終わったら帰ってきなよ。)」
普段、神や仏などにお願いをするなど全くないが、今は陽菜が帰ってくるように、心底願っていた。
御守りに願掛けをし、汚れないように懐にしまうと、家康は刀を抜き、敵陣の方に向く。
「邪魔者を排除しにいくか。」
「いざ、出陣!!!」
信長の号令に兵たちが大声で応じ、土ぼこりをあげ、一斉に敵陣へと駆け出す。
「今日が信長の命日で、ここが貴様らの墓場だ!!」
顕如達も一斉に信長達の方へ駆け出した。