第55章 恋から愛へ《14》家康side
「……来たぜ。」
政宗さんの声で、前方を見ると、顕如達だけでなく、確かに見覚えのある顔が混じっていた。
「あいつら、籠城はせず捨て身で戦うつもりらしいですね。」
「面白い。ようやく本能寺での借りを返せる」
信長は握っていた手綱を片手で握り、すらりと刀を抜き
「顕如が狙うのは俺の首一つだ。俺が先陣きって、やつを引きずり出し、俺の手で決着をつけてやる」
大将自ら先陣きるなんて、相変わらず、この人はめちゃくちゃだ……
「家康」
信長様が俺の方に向き
「貴様の手で断ち切ってこい」
ニヤリと笑った。
「……はい。」
柄を手にかけ、敵の軍勢を見据える。
信長様が今川家を滅ぼしたのに、まさか、これだけの数も今川の奴らが、落ち延びていたとは思わなかった。
俺自身の手で、カタをつける。