第54章 恋から愛へ《13》
「俺は、謙信様によく斬りかかられてたかな。」
「へっ!?斬りっ!?」
なんて物騒なことを、無表情でなんともないように言うの!?
「最初は、すごく怖かったな。今では慣れてきたけど…でも、だんだん斬りかかってくるときのスピードが速くなってるから、最初の頃は、ものすごく手加減してくれてたんだな…」
顎に手をあて、うんうん。と頷く佐助くん。
そんな冷静に受けいれられることじゃないんだけど……
「信玄様には、よく甘味を買ってくるように頼まれたな。あとは一緒に幸のことを揶揄ったりしてた。」
「幸くんは揶揄いやすいの?」
「まぁね。幸は素直だけど素直じゃないんだ。ただ揶揄ったときのリアクションが面白い。」
素直だけど素直じゃないって、それは素直なんだろうか……?
「じゃあ幸くんとよく過ごしてたの?」
「そうだね。歳も近いし、真逆のタイプだけど気が合ってたな。偵察とかも一緒に行ったりしていたし。良き相棒でズットモだ。」
佐助くんの顔が、少し破綻して、嬉しそうに笑っていた。