第53章 恋から愛へ《12》家康side
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翌日
顕如討伐に向かう俺達を、香菜と秀吉さんが見送りに城門まで来ていた。
「秀吉、留守と香菜のことを任せたぞ。」
「はっ!お任せください。」
「あの、みなさん、これ………」
香菜が袂から何かを取り出した。
「ほぅ。御守りか」
「はい…お世話になったお礼と無事であるようにと願って、前から陽菜と縫っていました。」
そういって香菜は皆に御守りを渡していき、最後に俺のところへ来て、
「すみません。家康さんの御守りは陽菜が持ってて…」
「陽菜が?」
「はい。戦に出陣するから、作ろうかと思ったんですけど、陽菜が作ってるからやめました。代わりにこれを。」
香菜が渡してきたのは、白地に小花柄の御守りで、いかにも女が喜びそうなもの。
俺は顔をしかめ…
「……なんでこの柄?」
「それ、前に陽菜が戦に同行したときに私が作ったやつなんです。あの子、部屋に落としたまま気づかず出ていったみたいで。陽菜から御守りを渡されるまで、それを持っててください。」
前の戦で出陣するときに言ってたやつか……
…………ん?
「……じゃあ、あの山吹色のは…?」
今川の残党に追われてたとき、陽菜が落としていた山吹色の御守りは……いったい…
「…それは陽菜が帰ってきたときに聞いてください。」
香菜が優しく微笑んでいた。
「家康、そろそろ出陣の時間だ。」
「はい。」
陽菜の御守りを懐に入れ、俺は馬に乗り、出陣した。