第52章 恋から愛へ《11》家康side
「その服は500年後では、お医者様だったり、研究する方が着ていたりする服です。佐助くんは、時空を越える研究をしていたみたいで……」
「時空を越える……佐助は500年後に帰るつもりだったというのか」
「そ、それは……」
謙信の冷ややかな眼、纏う雰囲気に、香菜の声が震え言葉がつまる。
それに、これだけ武将が集まっている。
普通の女、ましてや500年後の戦のないという時代から来たのなら、この空気に気圧されても仕方ない。
「謙信、刀に手をやっていては、姫が怖がって話せないだろ。」
「俺は誰の指図も受けん。」
「せめて、その殺気ぐらいは解いてください。佐助のこと話してんですし。」
信玄と幸村の言葉で、謙信は嫌々殺気を解く。
「香菜、話せ。」
「………はぃ…。佐助くんに最後に会ったのが一月半前ぐらいですが、そのとき佐助くんは、あと二月で現代に帰れるって言ってました…たぶん…帰るつもりだったと、思い、ます……」
香菜の声がだんだんと小さくなっていく。
「香菜と陽菜が安土に来て二月半。佐助は四年前にこの乱世に来た。本来ならあと半月で、その『わーむほーる』が現れるはずだが、一月早まった。」
「佐助殿だけ早くに来ていますから、時空の乱れなどが稀に起きる可能性があるのかもしれませんね。」
三成が、佐助だけ早くに来たことに、ひっかかりを感じたのか、考えを述べる。
「そうかもしれんな。佐助に聞けばわかるかと思ったが、その佐助も500年後に帰った可能性が高い。そうなると、以前のような嵐が来るのを待つしかないな……」
信長様の言葉で広間は静まりかえった。