第52章 恋から愛へ《11》家康side
「おい。今、何て言った?」
「あ?」
「佐助っていう忍、連れてきてないの?」
「連れてくるも何も、一月以上越後に帰ってきてねーよ。」
「何?」
聞くと佐助という忍は、偵察を終えた後、安土で金米糖を買うよう頼まれていた。
偵察を終えたという文が届いてから、なかなか帰ってこなかったときに、信長様からの文が届いたため、何かあったのかと思い、偵察にいった国に寄った後で安土にやってきたらしい。
「じゃあ……もしかして佐助くんも……」
香菜の呟きが聞こえた。
「佐助も、とはどういうことだ。女。」
謙信の冷たい瞳が、香菜を睨み付ける。
ビクっ!!
恐怖で震え上がった香菜は、秀吉さんの背に隠れたまま、袖を掴んでいた。
「貴様、香菜を怖がらせるな。」
「謙信、女子を怖がらせるのは良くない。」
秀吉さんと信玄の言葉が被る。
「……とりあえず、信長様に報告だ。謙信達も連れていって話をした方が早い。」
「そうですね。」
「ほう。信長の根城で斬り合いか。」
「そんなことさせるか。……お前たちにとっても大事な話だろう。」
渋々だが、謙信達を安土城に連れていくことにした。