第52章 恋から愛へ《11》家康side
「やっと来たか。」
陽菜が居なくなって一月が経とうとする頃に、ようやく上杉謙信、武田信玄、真田幸村がそれぞれ馬に乗り、少数の家臣達を引き連れ、安土城下にやってくるのが見えた。
秀吉さん、政宗さん、俺、それに唯一佐助を知っている香菜も連れて、城下の外れまで来ていた。
「香菜、佐助という奴はいるか?」
「ううん…あの中には居ないみたい…」
「忍って言ってたから堂々とはやって来ないんじゃないですか…」
謙信達が安土城下の外れまでくると、謙信、信玄、幸村が馬から降り、家康達のところまで近づいてきた。
「なんだ。信長の犬達ばかりか……信長はどうした」
「なんだと?」
「秀吉、構うな。」
政宗さんが秀吉さんの肩を掴み、落ち着かせる。
「謙信、まぁ落ち着け。野郎ばかりなら、すぐに斬りあってもいいが、天女みたいに美しい娘がいる。女子の前で野蛮な姿は見せるものじゃないよ」
信玄は片眼を閉じて、香菜に笑みを向ける
「…っ、あ、あの…」
香菜はビクリと肩を震わせ、秀吉さんの背に隠れる。
「ったく、信玄様、女なら誰彼構わず愛想撒き散らすのやめたらどうですか。」
「こんな素敵な姫に声をかけないのは失礼だろ?」
「んなもん後でやってください。それより佐助探しますよ。」
幸村のその言葉に、俺たちは耳を疑った。