第6章 動き始めた恋心〈4〉
「今回は勝ち戦になったので、そこまで怪我人は多くないですね。」
「…………これで少ない方……ですか……」
私は手を動かしながら、その言葉に唖然とした。
野営地についたのは昨日の夕方。
そして今日の朝に、戦は始まった。
前線に出ているのは政宗と家康さんで、三成くんはここで戦場から届く情報を把握し策を練ってまた戦場に伝えている。
『刀を振るうだけが戦ではありません。知略を尽くし施策を練る、これも戦いです』
って三成くんは言ってた。
人それぞれ、戦場での役割があるんだな。と思い、私も自分のやれることを精一杯やろうと心に決めた。
最初はそんなに怪我人も運ばれてこなかったけど、時間が経つにつれ、運ばれてくる怪我人の数は増え、私は必死に手を動かし、怪我した兵達を励ましていた。
怪我人の手当てもようやく落ち着いた頃
「陽菜様、まもなく政宗様と家康様がお戻りになりますよ。」
三成くんから声がかかる
「え?戦って1日で終わるの?」
「いえ、今日中に決着はつきません。ただ、夜は目が利かず、同士討ちが起こりやすいので、両者一時撤退になりました。」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう!」
「良ければ、お出迎えをしてあげてください。私もお二人に戦況などを詳しくお聞きしたいので後から参ります。」
「うん!」
「(家康さん、怪我とかしてないかな…戻ったら自分も様子見るって言ってたけど、間近で治療の様子とか見れるかな……そしたら少しは話とかも出来たり………って!!)」
「(何考えてるのよ!家康さんは私と違って戻ってきてもやることはいっぱいあるだろうし、それよりさっきから家康さんのことばっか!いや、もちろん政宗やほかの方達の心配もしてるけど…!)」
頭の中がなんだか忙しい。
「(う~………家康さんがあんなことするからだ……!)」