第49章 恋から愛へ《8》
「辛いことがあっても、乗り越えるぐらい芯の強い人で………」
人質生活の辛い過去も、心折れずに独りで頑張って……
「忙しいのに、私のために、時間、作ろうと、して……」
家康のことを話せば話すほど、短いけど家康と過ごした時間が鮮明に思い浮かぶ。
勉強したとき
戦に向かっていたときの馬上での会話
名前を呼びすてにしたとき
看病してくれた時間
今川家の生き残り達から助けてもらった瞬間
過去を話してくれたとき
額にキスしてくれた瞬間のことも……
全部思い浮かぶ。
「…陽菜……?」
同僚の声にハッとし、ジワジワと目に溜り始めていた涙を、指で拭う。
「……ごめん!なんかしんみりしちゃったね!とりあえず素敵な人だったの!そういえば、この前の外資系の人達との合コンはどうだったの?」
家康のことや戦国時代のことを思い出すと、どうしても、帰れないかもしれないという考えが過って、辛くて涙が出てくる