第5章 動き始めた恋心〈3〉家康side
戦に出陣する日の朝
香菜と秀吉さん、珍しく信長様までが見送りに来ていた。
光秀さんは、仕事で安土を離れている。
「陽菜、お守り持った?」
「うん!ちゃんと持ったよ!」
「陽菜、しっかり我が軍を勝利に導け」
「陽菜、気をつけろよ。絶対に無茶はするなよ。あと休めるときはしっかり休め。それから……」
「秀吉さん、そろそろ出陣したいんですけど…」
俺は馬を引き連れ、秀吉さんの小言が長くなる前に声をかけた。
「あ、そうだな。陽菜、無事に戻ってくるのを香菜と待ってるからな。」
秀吉さんは陽菜頭をポンポンと撫でている。
それを見てなぜか少し苛ついた。
「陽菜、俺の馬に一緒に乗れ。」
政宗さんが当たり前のように陽菜にそう言ったが、それにもまた苛ついた。
「あ、うん。でも薬のことでわからないとこがあるから、移動中、家康さんに教えてもらいたいんだけど……」
「(やっぱりわからないところあったのか)」
「そうか。それなら家康の馬に乗せてもらえ。」
「「へっ!?」」
「(たぶん隣に並んで話すより、一緒に乗った方が話しやすい。と思って言ったんだろうけど…)」
「帰りは俺の馬に乗れよ。」
そう言って政宗さんは馬に乗り、前の方に歩いて行った。
「………………」
「………はぁ」
ため息を吐きながら馬に乗る。
「……すみません…」
「いいから早く乗って」
手を差し出し馬上に引き上げる。
「っ///!!」
陽菜の顔が赤くなって、それを見た家康の目元も少し赤くなる。
心臓の音も若干速いが、今から戦に向かうのだからと気持ちを切り替え、落ち着かせようとしていた。
出陣してすぐに
「で、何がわからないの?」
「あ!えっとですね………」
わからなかったところを書き記した紙を懐から出し、俺に聞いてくる。
陽菜からの質問を一つ一つ丁寧に説明していった。
時間が経つと、顔の赤みはなくなり、心臓の音も普段通りになったのだが、陽菜が前に乗っていると意識すると、なぜか心臓の音が速くなるのだった。