第5章 動き始めた恋心〈3〉家康side
さっそく俺は、宣言通り厳しく教えているのだが…
陽菜は厳しくてもへこたれず、かなり真剣に俺の話を聞いている。なかなか根性はありそう。
さすがに『全薬草覚えてこい』には顔をしかめていたが…
二回もつっかかってきたから、どんな性格してんだ。と思っていたけど、根は真面目みたいだ。
わからないところはうやむやにせず、陽菜自身が納得するまで説明を求めるから、俺もかなり熱を入れて教えた。
城に帰ってからも復習・薬草の暗記をしっかりしているみたいで、勉強を始めた頃より、俺の言うことを理解していってるのが目にみてわかる。
手当ての腕前もどれぐらいか知りたかったから、練習で俺の腕にしてもらった。
『へぇ…手際いいね』
思ったまま口にすると、陽菜は少し照れながら
『ありがとうございます』
と嬉しそうに微笑んだ。
その微笑みに少し胸がざわついたが、つっかかってきた印象が強すぎたから、見慣れてなくて驚いただけだろう
戦が近づいてくると、戦の準備に追われ、毎日朝から晩まで軍議も開かれ、御殿に帰るのも夜中を回っていた。
陽菜に勉強の時間がとれなくなったことを言うと
『そうですか…。わかりました。今までに教わったところ、しっかり復習しときますね!』
忙しいのに教えてくださってありがとうございます。と笑顔で言っていたが、その笑顔は、少し寂しそうで、また胸がざわついた。
出陣前夜
「では、これで軍議は終わりだ」
軍議が終わり帰り支度をしていると
「して、家康。陽菜の出来はどうだ」
声をかけてきた信長様。
「まぁ、教えれることは最低限教えました。あとはあの子次第じゃないですか」
「ほぉ。では帰ってきたら、その報告も必ずしろ」
「わかりました」
「家康、陽菜に優しく教えたのか?」
「秀吉さん、あのときの会話聞いてなかったんですか?陽菜の言った通り、優しくなんてしてません」
「何?それじゃ陽菜が可哀想だろ。少しは優しくしないと嫌われるぞ」
「俺が一任されたんですから、俺のやり方で教えたまでです」
「ったく…戦から帰ったら何か褒美でもしろよ。あいつのことだ、かなり頑張るだろうし。」
「…一応、頭の隅にでもいれときます。」
勉強も頑張ってたし、一応考えておこう…