第41章 想い溢れる恋《12》
「じゃあ、俺、そろそろ行くから。」
「え?」
今までの雰囲気が嘘のような家康の普段通りの声に、パッと顔をあげる
「陽菜、ちゃんと薬飲みなよ。」
「あ、うん。」
家康が立ち上がったのを見て、見送るのに自分も立ち上がる。
家康の手が襖にかけようとしたとき
「(あ、もう行っちゃう……)」
ギュッ
咄嗟に家康の羽織を掴んだ。
「…っ……陽菜?」
羽織が引っ張られる感覚がしたのか、家康は少しだけ顔を後ろに振り返った
「あ…ごめん。えと、薬、ありがとう…」
パッと家康の羽織を掴んでいた手を離す
家康が体ごと振り返り、私の手を握り
また私の前髪を上げて、さっきみたいに額にキスをした。
「風邪が治ってからも、普通に会えるでしょ。この前、薬学の勉強出来なかったから、風邪が治ったら教える。」
「ほんと?」
「うん。」
家康が優しく笑って、それが嬉しくて私も笑顔になった。
「コホっ、早く風邪治すね。」
「そうして」
私の頭を優しく撫でて、家康は部屋から出ていった。