第5章 動き始めた恋心〈3〉家康side
「へ?なんで家康さんに…」
「治療の際、家康が作った薬を使うことが多いからだ。よく効くから治りも早い。それに他の救護兵から学ぶより、作った本人に直接学んだ方が手っ取り早いだろ」
「それはそうかもしれませんが、家康さんは不服なのでは……」
陽菜は、俺の表情をみて、明らかに嫌そうなのを感じとっている
「不服だろうがなんだろうが、俺の命は絶対だ。わかったら、今すぐ学んでこい。これで話は終いだ」
そう言って信長様は広間から出て行った
「………」
陽菜は放心状態。
「…陽菜…」
「陽菜、大丈夫か?」
「……秀吉さん…」
香菜と秀吉さんが心配そうに声をかけている。
秀吉さん、あんなに疑ってたのに…疑いが晴れたらかなりこの二人を世話焼きしてる
「不安かもしれないが、家康にしっかり教わってたら大丈夫だから心配するな!」
「大丈夫かは、あんたのやる気次第だけどね」
俺は不満の色を隠さずに声をかけた。
「こら、家康。優しく教えてやれよ。陽菜は初めてのことだらけなんだからな」
「なんで俺が優しくしないとダメなんですか。ただでさえ忙しいのに、薬学を教えろなんて……面倒でしかありません」
こんなことに時間かけるなら、もっと有意義に時間を使いたいのに…
「だいたい、こんな弱そうな女に、戦で怪我したやつの手当てなんでできるんですか。ちょっとした怪我の手当てとはわけが違うのに、今だって真っ青な顔して震えてるし、使い物になりません」
「おい、家康…」
「優しく教えなくて大丈夫です」
「「は?」」
陽菜の発言に少し驚き、秀吉さんと思わず陽菜の方を見る
「そこまで言うなら、家康さんのやり方で教わります。教わったうえで、使い物になるかどうかは、ご自分の目で確かめてください」
陽菜は俺を睨みながら、また噛みついてきた。
何度も女にここまで言われると思ってなく、俺も意地になり
「…わかった…言っとくけど俺は秀吉さんみたいに優しくしないよ。かなり厳しく教えるからね」
「…わかりました。お役にたてるように、しっかり学ばせていただきます」
「(俺が直々に教えるんだ。かなりしごいて使い物にしてやる)」
そう決意して、家康は広間から出ていった。