第36章 想い溢れる恋《7》
熱があったときは、家康は頻繁に様子を見に来てくれた。
でも、だんだん熱も下がって怪我も治ってくると、もちろん、家康が来る頻度は少なくなる。
だから、家康に来てほしいために、咳止めの薬を飲めずにいた。
あまりにも幼稚でずるい考えだけど、こうでもしないと忙しい家康には会えない。
家康の時間を奪っている自覚はあるのだが……
「…陽菜、陽菜の行動って、家康さんを傷つけてるって気づいてる?」
「え?」
「私は、あまり家康さんと話したこともないし、性格とか考えてることはあんまりわからないけど…
陽菜が戦に行くように言われた軍議で、信長様が言ってたでしょ。家康さんの薬はよく効くって」
「あ……」
――――
『治療の際、家康が作った薬を使うことが多いからだ。よく効くから治りも早い。』
――――
「……コホ、言ってた…」
「でしょ?薬飲まなくても、いずれは陽菜の咳も止まるだろうけど、その間、家康さんはずっと悩むんじゃない?
しかも、みんなが家康さんの薬は効くって言ってるのに、陽菜の咳がなかなか治らなかったら、家康さんの信用まで落とすかもしれないんだよ?」