第35章 想い溢れる恋《6》家康side
部屋を出て、三人で少し歩いたら、政宗さんと秀吉さんが立ち止まり、振り返って
「「で?」」
「は?」
何?
政宗さんは持っていた膳を俺に押し付け、肩をガシッと組んできて、
秀吉さんは俺の頭をガシガシと撫でる
「ちょっ…なにするんですか!」
「なにするんですか。じゃねー。お前こそ何してんだよ?」
「は?」
「弱ってるときに手出すとはな………」
「!!」
やっぱり見てやがった………
「……見間違いじゃないですか…」
「陽菜も目、閉じてただろ。」
「閉じてません。閉じようとして…っ」
「「へぇ~…」」
俺の言葉でさらにニヤニヤする二人。
「お前、手出そうとしたの認めたな。」
「……何のことです。それより、秀吉さん、香菜とどうなったんですか」
俺から話題を逸らすために秀吉さんにふる。
「へ?」
「ん?ひっついたんじゃないのか?」
「どうも違うみたいですよ。」
「いや…香菜とは、あの、その…」
「秀吉、洗いざらい吐け」
政宗さんの標的が秀吉さんに向いたことで、俺は二人の腕からすり抜け
「では、俺はこれで…」
スタスタ歩いていく。
「あ!こら!家康待て!」
秀吉さんの声を無視して、持たされた膳を持って厨に向かう。
持っていくのは面倒だが、あのまま捕まった状態から逃れるなら、これくらいのことはしてやろう。
廊下で政宗と秀吉が騒いでいる声を聞きながら、家康は足早にその場を去った。