第31章 想い溢れる恋《2》家康side
「昨日、お前の様子がいつもと違ったが……もしかして今川の奴等のこと知ってたのか?」
「……はい。朝に光秀さんから、今川の残党が、安土に潜んでいる可能性があると聞いてました。もし、陽菜が御殿から出てくるところを見られたら、真っ先に狙われると思ったんで。」
「そうか。それでお前、陽菜に八つ当りしたのか?」
「…っ…」
「お前が今川家を憎もうが、それはお前の勝手だ。でも、それを陽菜に当たるなよ。あいつは関係ないだろ。」
「………そうですね。俺が当たらなければ、こんなこと起きなかったですし…これから陽菜に謝りに行くんで……」
「そうか。引き留めて悪かったな。なら早く陽菜の部屋に行ってやれ。怪我の手当てもまだなんだろ。」
「はい。じゃあ、俺はこれで。」
政宗さんに背を向け廊下を歩いた。
政宗は、家康と反対側に廊下を歩くと、
「まさか、家康の素直な反応が見られるとはな」
廊下の角から声が聞こえ
「光秀…お前聞いてたのか」
「聞こえただけだ。それにしても、あの家康がな……」
「あ?なんだ?」
「おや?お前なら気づいてると思ったんだが?俺の気のせいか?」
「…さぁな。」
「ふ…まぁいい。」
そう言うと光秀は政宗の横を通り家康が歩いていた方に歩いていった。
「気づいてるっつーの。家康と、陽菜の方もな」
その言葉は光秀には届かなかった。