第31章 想い溢れる恋《2》家康side
翌日の夕刻、信長が視察から戻り、すぐに軍議が始まった。
「今川家の残党が、陽菜を拐おうとした?」
「はい。今は捕らえて牢屋にいます。」
「奴等の目的はなんだ。」
「今川家を壊滅した信長様と、寝返った家康に復讐するつもりだったそうです。」
「俺は寝返ったつもりはないんですけど。」
「わかっている。だが、あいつらは信長様と同盟を組んだお前が、今川を裏切ったと思っているから、そう思われても仕方ない。」
「話を続けろ」
「はい。野党のふりをして、城下の治安を悪くさせ、家康を引きずりだし、家康を殺そうとした。そうすれば、信長様の勢力も弱まると思い、そこを叩こうとしていたようです。」
「ふん。頭のたらん今川の奴等が考えそうなことだな。では、なぜ陽菜が狙われた。」
「はい。陽菜が狙われたのはたまたまです。
家康の御殿を見張っていたら、陽菜が一人で出てきたみたいで、女中に見えなかったから、家康の女だと勘違いをし、陽菜を拐えば、すぐに家康を引きずり出せると考え陽菜の後を追っていたと。」
「陽菜を襲おうとした奴は、拐おうとしたときに陽菜が抵抗して、手を噛んだそうなんですが、それの腹いせに襲おうとしたようです。俺の女だと勘違いしているから、陽菜に手を出せば、さらに俺の苦しんだ姿が見えると思ったんでしょうね。」
ほんと、あいつらが陽菜に手を出したことは許せない。