第29章 近くて遠い恋《15》家康side
「あ、あの……助けてくれて、ありがとう……」
「…………(お礼を言われることじゃない…)」
「……迷惑、かけて…ごめんなさい……」
「…………(俺のせいなのに…)」
――――
『お前、陽菜に何かしたのか』
――――
家康の顔をみて、お礼と謝罪を言った陽菜に、政宗の言葉を思いだし、謝罪してもしきれない想いで、何も言えなかった。
沈黙に耐えきれず、陽菜は顔を俯かせる
懐から先ほどの御守りを取り出す
「…これ、陽菜の?」
「え?」
顔をあげる陽菜
「(つい最近も同じやり取りがあったな…)」
家康の手に乗せた、山吹色の御守りを陽菜に見せる。
「え…なんで、家康が…………」
「ここに来るまでに落ちていたから。戦に行く直前に、香菜と御守りを持ったかどうかの会話が聞こえたから、もしかして陽菜のかな。と思ったんだけど。」
「あ、ありがとう………」
陽菜は手を出し、その上に御守りを乗せる。
「(拾ったときは、陽菜を探すのに必死だったけど、今、取り出したときに見たら、少し歪んでいたような……?)」
気のせいか。