第28章 近くて遠い恋《14》
「あ、あの……助けてくれて、ありがとう……」
「…………」
「……迷惑、かけて…ごめんなさい……」
「…………」
家康の顔をみて、お礼と謝罪を言ったけど、家康は何も言わなかった。
「(……怒ってるよね……)」
沈黙に耐えきれず、顔を俯かせる
「…これ、陽菜の?」
「え?」
つい最近聞いたことのある台詞に顔をあげる
家康の手には
私が作った山吹色の御守りが乗っていた。
「え…なんで、家康が……………」
「ここに来るまでに落ちていたから。戦に行く直前に、香菜と御守りを持ったかどうかの会話が聞こえたから、もしかして陽菜のかな。と思ったんだけど。」
「あ、ありがとう………」
手を出し、その上に御守りを乗せられる。
「(知らない間に落としちゃったんだ……雨で濡れて汚れちゃった………)」
今日のことでもかなり迷惑をかけたから、お詫びも兼ねて、また作り直そうと思ったが、距離をおかれた今、受け取ってくれるのだろうか……
「(どうするかは、また考えよう……でも、一瞬でも、家康の手に渡ったんだ……)」
直接でないにしろ、家康のために作った御守りが一瞬でも家康の手に渡ったのは、嬉しかった。
「(この御守り、大事にしよう……)」