第28章 近くて遠い恋《14》
「……香菜が心配してるから城に帰るよ……」
「あ、うん……」
くるっと背を向け、歩きだす家康
後を追いかけようとしたが、怪我と走りすぎで、足に力が入らず
ドサっ
倒れてしまった。
家康が振り向き、近寄って
「……どこか怪我したりした?」
「…あ、足の裏切っちゃって……」
「…え?……あぁ…結構深いね……」
家康は私の足を見て、顔をしかめる。
「(あ、また仕事増えたとか思ったかな…)」
これ以上、家康に迷惑かけたくないし、距離をおかれたくない。
「あの、ゆっくりなら歩けるし、応急処置だけしたから、大丈夫!ごめんね!迷惑かけて!」
立とうとしたら、家康が、くるっと背を向け、今度はしゃがんだ
「乗って」
「え?」
「その足じゃ歩くの辛いでしょ。早く手当てもしないといけないし」
「あ、でも…迷惑じゃ…」
「ちんたら歩かれた方が迷惑だから、早く乗って」
「あ、うん。失礼します…」
躊躇いながらも、家康の背中に体を預け、おぶってもらった。
「怪我、辛いだろうけど、城に着くまで我慢して」
「うん。ありがとう。」
家康の背中は、見ため以上にしっかりしていて、雨で濡れているのに温もりを感じた。
逃げ回っていたときの緊張が解け、もう大丈夫だという安心感と体の揺れで、私は家康の背中で眠りについた