第26章 近くて遠い恋《12》
「はぁ……はぁ……これで、少しは…はぁ、マシかな…」
やはり、何も持っていなかった陽菜は、帯揚げを包帯代りに止血するしかできなかった。
「……はぁ…はぁ……家康……」
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家康の御殿を出て、真っ直ぐ城に帰らず、雨の中、城下をフラフラしていた。
気づけば、橋のところまで来ていて、橋をボーっとみていた。
すると
「っん!?」
後ろから、誰かに手で口を塞がれ
「おっと。声あげるなよ」
気づけば、男四人ぐらいに囲まれ
「家康の御殿から出てきたな。家康の女か」
ふるふると首を横に振る
「まぁ、どっちでもいい。こいつ餌にして、信長と家康引きずりだす。連れてくぞ。」
どこかに連れて行かれそうになったから、咄嗟に
ガブっ!
「痛っ!」
口を塞いでた男の手を噛み、緩んだ瞬間に、男を力任せに押し、そのまま走り出した。
「待てっ!!女!」
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お城に向かって走れば良かったのに、お城側に男達が居たから、反対側に逃げてしまったけど……
ううん。真っ直ぐお城に帰っていれば、こんなことにならなかったはずだ。
家康に距離を置かれて、ショックだったとはいえ…かなり考えなしな行動だった……