第25章 近くて遠い恋《11》家康side
陽菜が出ていった後、雨が地面や屋根を叩きつける音を聞きながら、家康は自己嫌悪に陥り、
懐から陽菜に渡す予定だったものを取り出し
「陽菜………ごめん……」
握りしめ、届かない謝罪を何度もしていた。
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夕刻すぎ、女中が夕餉の用意が出来た。と言ってきたが、いらない。と告げ、書簡に目を通すが頭に全く内容は入ってこない
「(……やっぱり、すぐに謝りに行けば良かったな…)」
でも、もう遅い
「……なんで俺はこんなにも弱いんだよ……」
項垂れ、頭を抱えたとき
――……バタバタバタ!
激しい足音が聞こえ、頭を上げると
――バンっ!
勢いよく襖が開き
「家康!!」
「!?秀吉さん?」
珍しくかなり慌てた様子の秀吉さん。
激しい雨の中来たから、ずぶ濡れになっている
「陽菜は!?」
「え?」
「香菜が陽菜がまだ帰ってこない。って心配して俺に聞いてきた。陽菜は今日、家康に薬学を教えてもらう。って香菜が言ってたから、お前のとこに来たんだが…居ないのか?」
「え…」
あの後、真っ直ぐ城に帰ってなかったのか………?
この雨の中…女が一人で居たら………
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『野党…?』
『あぁ。老若男女関係なく襲っているらしい。』
『その野党共、どうやら今川家の生き残りの可能性がある』
『信長様とお前各々に恨みをもってる奴がいるのはまだわかるが、その野党は信長様と家康に対していい逃げしている。ここまで恨んでいる奴らは、今川家のものしか思い浮かばなくてな。』
――――――
朝、光秀さんに言われたことが瞬時に過る
もし、本当にその野党が今川家の生き残りで、俺の御殿から陽菜が出てくるところをどこかで見ていたら………
真っ先に陽菜は狙われる。
「家康!?」
居ても立ってもいられず、俺は御殿から飛び出した