第25章 近くて遠い恋《11》家康side
「あ、ごめん。」
謝罪しながら、すぐに俺の方を見た陽菜は、かなり驚いた顔をしている。
俺の目がかなり冷たかったからだろう。
「あの、いえや…」
「そんなに心配なら行ってこれば」
「え…?」
「それに、政宗さんの言うとおり、当分戦はないし、陽菜が急いで学ぶことなんてない。」
「で、でも!前のとき、足手まといだったし……」
足手まとい?何言ってるの。
「そんなことないんじゃない。救護兵達もあんたがいてかなり助かったって言ってたし、軽い怪我なら任せてた。って聞いてたから」
「それは、ほんとに軽い怪我で…」
「悪いけど、今日は帰ってくれない。急ぎの仕事思い出したから」
そう言うと、俺は文机の上に置いてあった適当な文を手にとり目を通しはじめた。
陽菜の方には一切見向きもせず、ただただ、じっと文に目を向けていた。
「(お願いだから帰って……)」
今でも充分酷いことを言っているが、これ以上陽菜が居てると、もっと酷いことを言ってしまいそうだ
「……時間作って、くれたのに、、ごめん、なさい……」
陽菜の震えた声で謝罪の言葉を聞き、陽菜が立ちあがり部屋から出ていくのを、気配と音だけで感じとった。
その数分後、雨が降ってきた。