第25章 近くて遠い恋《11》家康side
「なんだ。陽菜も居てたのか?」
「あ、うん。薬学の勉強を教わりに…」
「薬学?もう戦終わったのにか?当分は戦もねぇぞ。」
「あ、えと、それは……」
口ごもる陽菜。政宗さん…何しに来たんだ。
「政宗さん、返事も聞かずに勝手に開けないでください。それより、何の用ですか?」
「あぁ、家臣が稽古中に怪我してよ。薬貰いにきた。」
怪我は打ち身らしく、聞いてると、政宗さんに稽古をつけてもらい、木刀が肩と脇腹にあたったようだ。
政宗さんが慌てた様子じゃないから、たいした怪我ではないだろう。
「その人、大丈夫なの?」
陽菜は心配そうに政宗さんに聞く
「大したことないが、一応念のためだ。」
やっぱり。
棚から打ち身に効く薬を政宗さんに渡す
「悪いな。助かった」
「いえ…」
「あ、政宗。私、手当てしに行こうか?」
「「は?」」
陽菜、何言って……………
「あ、脇腹や肩だったら、一人でしにくいし…。女中さん達も忙しくしてるから、私だったら時間もあるし……」
………………
陽菜の性格を考えると、怪我人は放っておけないだろう…
わかってはいるが、陽菜との勉強の時間を楽しみにしてた俺には、かなり残酷な言葉だ。
「いや。その家臣と政務の話をするから大丈夫だ。気持ちだけ受け取っとく。お前は家康にしっかり教えてもらえ。」
ニカッと笑って、政宗さんは手を軽く上げ、部屋を出ていった。
政宗さんが出ていったあとも、陽菜は襖の方を見ている
イライラする……
「……陽菜…」
声をかける。