第3章 動き始めた恋心〈1〉
広間に入って末席に二人で座っていると、武将達が入って来て、最後に信長様が入り上座に座ると軍議が始まった。
二人とも歴史には詳しくないが、わからないなりにも聞いていた。
どうやら戦が起きるみたいで、その相手が、死んだはずの越後の龍『上杉謙信』と 甲斐の虎『武田信玄』が実は生きていて、しかも同盟を組んで、信長様の命を狙っているらしい。
そして、その二人は、織田領の支城に攻め込むために兵を集めていること。が報告された。
戦が起きるというから、広間の空気はピリリとしたものに変わっていた。
それにしてもなぜ呼ばれたのかわからない。
呼ばれた理由を考えようとした瞬間
「この戦に陽菜、貴様を連れて行く。」
へ?
「な…!なんでですか!?」
「なんでもなにも、貴様らが幸運をもたらすからだ。
二度も俺の命を救ったのだ。この戦でも勝利を導け。」
「そ…そんな……」
……行きたくない……怖い……
お守りみたいなご利益なんてないのに…
顔からはだんだん血の気がひいて、膝の上に置いてる手がガタガタ震えだした。
「陽菜…」
心配そうにお姉ちゃんが私の手を握ってくれた。
「それに、陽菜、貴様は手当ては慣れていると聞いたが、慣れているのか?」
へ?
―――
『道具さえ貸して頂いたら私がします。手当てには慣れているんで!』
――
…あ。安土城に来たときのことか…
「…はい。ここへ来るまでは、えっと………医師の補佐をする仕事をしてたので、ほぼ毎日、怪我人の手当てをしていました……」
「では、その手腕をこの戦で存分に活かせ」
「……わかりました…」
「(戦に同行するのは嫌だけど、怪我した人の手当ては一生懸命やろう…でも……)」
兵士達は命がけで戦うのだから、軽い怪我ではないと思うと、手の震えはますますひどくなった。
「あぁ、それと、戦に行くまで家康の元で薬のことを学べ」
「………は?」
なんで?