第23章 近くて遠い恋《9》家康side
「それより、そろそろ帰ったらどうです?信長様が不在の間、城を任されてるんでしょ。」
「あぁ…そうだった…家康、仕事中に悪いな…薬、助かったよ」
「いえ。いろいろとお大事に」
来たときより、違う意味で顔色が悪くなった秀吉さん
ふらつきながら、俺の部屋から出ていった。
少し心配だが、子どもじゃないし、なんとかするだろう。と思い、秀吉さんのことはもう考えないことにした。
「だいぶ予定が崩れた。急いで終わらせよう」
夕刻前には、予定していた量は無理でも、そこそこ終わらさなければ。
じゃないと、《大事な用》が出来なくなる。
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書簡整理が一段落して、伸びをする。
チラッと開けっ放しにしていた襖の方を見て、空の色がまだ夕刻前であることに、ほっと軽く息をはき、一安心する。
「そろそろ出るか…」
俺は《大事な用》のために御殿を出た。
《大事な用》
それは
陽菜に戦で頑張った褒美を探しにいくこと。
こういうのは苦手だが、陽菜の笑顔が見れるかもしれないと思い、城下に足を運び、陽菜が喜びそうなものを探していた。