第21章 近くて遠い恋《8》
お姉ちゃんが淹れたお茶で雑談しながら休憩していると
トントン
どこからかノックする音が聞こえ、
「香菜さん、陽菜さん。今、大丈夫?」
「あ。佐助くん。どうぞ」
天井の板を外して、佐助くんが顔を出し、音もなく畳の上に着地した。
「久しぶり。二人とも元気だったかい?」
「うん。佐助くんも元気そうで良かった。」
「あぁ。なかなか顔を出せずに申し訳ない。ちょっと安土を離れていたから」
「ううん。気にかけてくれててありがとう」
お姉ちゃんが佐助くんの分のお茶を淹れ渡すと、お礼を言った
「戦国ライフには慣れてきた?」
「うん。皆さんに良くしてもらってるし、戦国時代でも、なんとか職に就いたよ」
「へぇ。どんな職業?」
「お姉ちゃんは針子さん。私は……えっと、救護兵…かな?」
「え?」
「あ。この前、ちょっと小競合いの戦があって、そのときに救護するために同行するよう言われたの。現代では看護師だったから。」
「あ。そうなんだ…。まさか、あのときの戦に陽菜さんが同行してたとは…」
「「え?」」
「あ。」
佐助くんは無表情だけど、なんとなく『しまった』というような顔をしている。
「あのときのって…なんで、佐助くんが戦のこと知ってるの…?」