第20章 近くて遠い恋《7》家康side
「(全然、話せなかった……)」
せっかく陽菜が、政宗さんから逃げて、俺の右隣に移動してきたのに……
話せなかったことを後悔していた。
そして、ふと思った……
信長様や政宗さんの戯れで赤くなっていた陽菜の反応と自分への反応…
もしかして、男として意識されてない?
信長様と同じこと、野営地でしたけど…
あんな反応じゃなかった…………
『薬学教えてくれてる先生』
そう言ってたし…
完全に意識されてないな……
そう思うと、さらに眉間に皺がよっていく。
待てよ。
帰ったら、薬学教えるって言ったけど…
陽菜は、まだ教わりたいと思ってるのか?
野営地で『自分はまだまだ』だと落ち込んでたし、俺自身が陽菜といたいし教えたいと思ったから言ったけど…
いろいろ考えるより陽菜本人に聞いたほうが早い
そう思って陽菜に声をかけようとしたら
「家康様」
家臣が挨拶とお酌をしに来た。
後で。と思ったけど、挨拶に来た家臣は、この戦でかなり先陣きっていったから、労いの言葉はかけてやらねば…
話していると陽菜は、そっと傍を離れ、姉の方に向かい、何かを伝え
信長様にも挨拶をして広間を出ていった
俺は陽菜の出て行く姿を目だけで追っていた