第1章 小さな恋心
大宮さんはまだ入社して半年で、色々教わり途中。だけど人手不足からこうして一人で仕事してもらう事もチラホラあって心苦しい。
申し訳なく思いながら困ったことはあったか問いかければ大宮さんは慌てて首を横に振った。
「いえいえ!問題もなにもなかったですし大丈夫ですよ!」
「良かった・・・あ、そういえ・・・」
「あれ、帰ったんじゃなかったんだ〜」
ビクリと肩が跳ねた。カチリと一瞬固まって恐る恐る振り返れば、高林さんが笑いながら歩いてきた。今日は本当によく会う日だと思う。ドキドキする胸をさり気なく手で押さえながら笑みを浮かべた。引きつってないか不安だ。
「もう帰りますよ」
「え、もう少しゆっくりしていこうよ〜」
「何言ってるんですか、ゆっくりするのは高林さんでしょう」
「俺も嫌だわ!!」
すかさずやってきたツッコミに笑った。隣で大宮さんも笑っている、この和やかな空間が心地いい。今はきっと普通に話せてるはず。今思えば彼と話すようになったきっかけはなんだっただろうか。
「一瀬さんと、高林さんって年齢一緒?」
「いえ、高林さんが2つ上です」
「俺、26だからねー」
「結構近いんだね!えービックリー!」
「なんすか、まさか俺が老けてるとでもー?」
「いや、うーんまぁね〜」
聞いたことある会話に笑ってしまった。確か、私と初めて会話した時もこんな感じだった気がする。彼は自分が年齢よりも上によく見られるらしく、気にしているのだ。実際話してみるとそんなことはないのだけれど。
「なにー?一瀬ちゃんもそう思ってるんでしょ!」
「まさか、違うよまだ気にしてたんだなって」
「気にしてたの?ごめん、ごめんーいやさ二人とも落ち着いてるからさー」
二人ともということは私も上に見られていたのか。目を丸くすれば高林さんが声を上げて笑った。不満げに見れば何故か高林さんは嬉しそうな表情。
「一瀬ちゃんもだってさー」
「なんですか、もうー」
「仲良いねぇー二人は恋人はいないの?」
「高林さんいますよね」
大宮さんの質問に、一瞬沈黙が流れた。その沈黙が何となく怖くて私はすかさず笑いながら高林さんに話を振った。