第1章 小さな恋心
「とりあえずこの話は終わりね?仕事しないと、高林さんも仕事あるでしょう?大丈夫なの?」
「俺は大丈夫、朝は余裕あるから」
「できる人は違うねーさすが。それじゃ、私は自分の仕事をしますかね」
おどけたように言って私は書類に目を向けた。この仕事は時間が少しかかるけれど、時間に追われるくらいの事じゃないから比較的楽だったりする。ただ、細すぎる所が難点だ。ミスをしないように集中する。
「俺も作業しよっと」
そんな声が隣から聞こえてチラッと視線を向ければ隣に座っていた。目を点にする。
「パソコンじゃないの?」
「ん?うん、パソコンだよー」
ほら、と彼はパソコンを見せた。どうやら、パソコンというのは会社のではなくて自分のパソコンだったらしい。それならどこでも作業できるから自分の席でも良かったんじゃないのかと思ったけれどそれを言ったらまた拗ねそうだったのでやめた。
「ねね、一瀬ちゃん」
「ん?なに?」
仕事しながら声だけで反応する。彼はこちらを向いている気配がするけれど。スラスラとペンを動かしながら書類を見る。所々在庫が合わない部分があるな、と思いながら彼の次の言葉を待つけれど何故か無言。