【跡部】All′s fair in Love&War
第2章 ジェニーはご機嫌ななめ
「アホべの馬鹿ぁあああ!!!!」
あぁ、今日もまた叫んでしまった。
もう慣れっこの部員達はまたか、と苦笑しながら私たちを一瞥し、またすぐ練習に戻る。少しの気恥ずかしさを覚えつつも、舌戦を止めるつもりも無く目の前の跡部をキッと睨みつける。
「おい松元、アホべじゃねぇ、跡部だ」
「んなこと分かってるわよ!わざとよ!そんでもってそんな事はどうでもいいの!どうしてあたしが買い出しに行っちゃダメなのよ!」
「一年に行かせりゃいいじゃねぇか」
「一年の子にはその子の仕事があるの!あたしは今、手が空いてて、だから買い出しに行くって言ってるのに!」
スポーツドリンクの素を買いに、近くのショッピングモールまで。誰かに自転車を借りれば、30分もすれば戻って来れるだろう。最近の暑さでドリンクの減りは思いの外早く、今日の分が足りるかも微妙だった――だからわざわざ買い出しに行く、と申し出たのに、目の前の男は何故かダメだという。しかもはっきりとした理由も無いようで、とにかく他に行かせろ、との一点張りが暫く続いている。
「なんであたしじゃダメなの」
「松元の力じゃ重くて運べねぇだろうが、アーン?」
「じゃあ、樺地に手伝い頼むっ」
そう言うと跡部は品悪く顔を顰めた。今のあたしはイライラしているけど、跡部はいつも公明正大で、誰かを特別扱いなんてしない筈だし、新入りの一年には苦労させろ、なんて古臭い考えも持っていない。だからなにか理由があるだろう、と思ったのに何も言わない跡部に、あたしの神経は更に尖っていく。
「もういいっ、勝手に行くからっ」
そう言い捨てると背を向けて、準備のために部室に向けて走り出す。跡部はもう、何も言わなかった。