【跡部】All′s fair in Love&War
第13章 幕間に交わす秘密のお話
コツン、と石が転がっていく音がする。隣を歩く守河が立てた音だ。
「どーしたのさ、イライラして」
「別に、何でも無いわよ?」
理由なんかわかっていて、そして答えが返ってこないのをわかりきった上で尋ねる。にこり、と笑う守河はいつも通りに見えて、しかし確実にいつも通りでは無い。少し俯き加減で歩く守河の顔には、いつもと違って影が刺している。
クレープ屋を出て、跡部が皆を送る、と言ったのに。それを断って、――ジロちゃん、2人で歩いて帰りましょ、なんて言うから多少なりと期待したのが馬鹿みたいだ。
何か話題を変えよう、と会話の種を探す――聞きたいことは山ほどある、何せ守河は自分の事を多く語らない。口を開けば千花ちゃんと、千花ちゃんを…極たまーに、ジロちゃん可愛い…千花ちゃんが、千花ちゃんに…と言った具合だから。
「守河は――」
「ん?なーに?」
松元の事どう思ってるの、なんて直接的には聞けず、言葉を飲み込む。そしてその代わりに、気になっていた事ランキング、第二位の質問を。
「どうして松元と仲良くなったんだ?」
「え?うーん、そうだなぁ」
――何より、知ってのとおり千花ちゃんは可愛いじゃない?性格も、見た目も――などと御託を並べながら、ふ、と優しい表情に変わる守河。
「でも、全ての始まりは小三…だったかな」
「へー、もっと昔からかと思ってた」
「意外と短くて、でも濃ゆいのよねぇ、私と千花ちゃんの関係は」
――長くなるけど、聞いてくれる?
そう首をかしげて聞く守河に頷き返す。
「ではでは。むかーしむかし、ある所に可愛くて聡明な守河茉奈莉という女の子がいました…ちょっとジロちゃん、ツッコミどころよ?」
「いや、事実だろうしー」
「…ふふ、ありがと」