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【跡部】All′s fair in Love&War

第12章 秘密は砂糖より甘い(後編)





「松元」
「…何よ」


もうまともに顔が見れるはずもない。必死に絞り出した声も上擦った気がする。


「…いや?何でもねぇよ」


またくくっ、と笑う跡部を睨みつける、目が合って、思わず息を呑む。――そんな嬉しそうな顔も、優しい目も、初めて見た気がする。あたしからだって、ちゃんと分かってくれてるのかな。くれてたらいいな――まるで祈るような、気持ち。



「おい松元…お前も一つ、食うか」
「…ありがと」


跡部が差し出してくるあたしの選んだチョコ、幾つか種類が並ぶ中から、以前跡部がくれたものと同じ一番プレーンな物を選んで、口に放り込む。ジロちゃんにはダメって言ったのに、あたしはいいの、とか、この前食べた時は苦さが勝っていたのに今日は何故か少し甘く感じるな、とか、色んな言葉が浮かんできて――でも、跡部が少し微笑みを湛えてこちらをじっと見ているから、調子が狂って全てチョコと一緒に飲み込んでしまう。


来年はちゃんと手渡しするんだ、と心に誓いながら。ここに来た時よりも随分と晴れやかな気分で、戻ってきた茉奈莉ちゃんからのクレープを受け取った。


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