【跡部】All′s fair in Love&War
第10章 Season of Love
「今松元がみっともねぇくらい喚いてくれやがったからな、それで充分、スッキリした」
「…え、」
跡部が言った言葉が上手く理解出来ず、聞き返す。ふ、と柔らかく笑う跡部に思わず見惚れそうになる。
「俺様は自分が泣かないでいるために、松元を連れてきたって訳だ…感謝するぜ」
そう言って、跡部は今度こそ歩き出した。
ぼーっと言葉の意味を反芻していたあたしも、急いで追いかける。
「…跡部、お腹空いた」
「そりゃあ、あれだけ泣き喚いたらな…この近くに行きつけの喫茶店がある、モーニングが旨いぜ」
「わ、そこに決定!いこいこっ」
今日の跡部の行動の意味は殆どがよくわからなくて、ただただいつもより優しいのが気味悪いようで、本音では嬉しくて。でも、あたしと跡部、どちらものためになったんだろう、と片付けてしまう事にする。
きっと跡部はあとべなりに上手く昇華している。そしてもう次の先を見据えているのだ――そこまで理解して、そしてあたしも密やかな決意を固める。
明日から部活は再開するけれど、きっともう大丈夫だ。あたしも、跡部も。