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【跡部】All′s fair in Love&War

第7章 carnival day!(中編)




――シンデレラが実在したら、きっとこんな気分だろうなー。


そんな下らないことを考えてしまうほど、私は何処かぼんやりと裏方仕事をこなしていた。かえって忙しいのが救いな位で、少しでも暇があればイライラに飲み込まれてしまいそう。


「松元、こっちにカプチーノ二つくれよ!」
「はいはーい、がっくん待ってー!」
「松元、さっき言うてたショートケーキってまだなんかな?」
「あ、忍足それは一年に任せちゃったから聞いてみて!」


目が回る。バタバタと忙しく動き回る部員達、でも跡部は全然裏に来ない。女の子に囲まれて身動きが取れないことは容易に想像がついた。――あぁ、またイライラする。


「お待たせ宍戸、アイスコーヒーだよ!」
「おう!サンキューな、松元っ」


あんなに嫌がってた宍戸ですら、自然と笑顔を浮かべている。そりゃ楽しいよねー、いつもと違う非日常の中で。すっかり腐ってしまった思考、グチグチと零してしまいそうになる――


「大丈夫ですか?松元さん」
「…ちょた、」
「忙しい時こそ笑顔ですよっ!」


そんな私にも、子犬のように眩しい笑顔で話しかけてくる長太郎。沈みきっている私に気付いてのことだろうけど、今はそれも素直に受け止められそうになくて、当たり障りない会話に終始する事にする。


「ちょた、カッコイイね」
「え!!?そ、そうですかね」
「うん、よく似合ってる。背が高いからかな?ほんとの執事みたいだね」


仕立ての良いシルバーの燕尾服に、中はしっかりと第1ボタンまで閉じられたストライプのシャツ。いつも制服で隠されているロザリオはオシャレだから出しとけ!と宍戸に言われてその通りにされている。ニコニコと柔らかく微笑む姿は、まるで本当に良家に仕える執事のようだ。


「早く戻らないと、お客様待ってるよー!」
「うーん…俺、考えてたんですけど」


顎に手を当てて何かを考える様子のちょた。
そしてはた、と手を打ち笑った。


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