【跡部】All′s fair in Love&War
第5章 ゆく川の流れはたえずして
そこから俺は跡部にこてんぱんにのされ。更には今までの無礼な行いを責められ。皆の前で謝らせられ。まぁ、散々な目にあい、一度プライドを粉々にされた。だが、お陰で皆とはその後すぐに打ち解け、二年になる頃には正レギュラーの座を勝ち取った。
――東京に来てよかったわぁ、おどけたようにそう言うと、二人は自分の事のように嬉しそうに笑っていた――
「という訳なのよ!忍足、酷くない?」
「まぁまぁ、俺に言わせると跡部も松元もどっちもどっちやねんけど」
そんな訳で、松元は俺の恩人だ。松元の悲しむ顔は見たくないから、試合は負けられないし部活もサボれない、それはそれは充実した中学生活だ。俺も松元も、この二年の間に成長した。松元はあの時想像もつかなかった程、可愛い「女性」になっている。
――なのに、もう一人の恩人とは相も変わらず。
「でもなぁ松元?嫌よ嫌よも好きのうち、って言葉知ってるやろ?」
「忍足…テメェ、何言ってやがる」
いつも通り、松元を追いかけてきた跡部に聞こえるようにからかってやる。松元の真っ赤になった顔は、死角になっていて跡部には見えていないだろう。
――まだ、くっついたりせんといてなー。
もうちょっと、大好きな二人の間に俺も混ぜといてよ。決して口に出せない俺の希望は、今日も無事叶えられたのだった。