【跡部】All′s fair in Love&War
第38章 恋と戦争に手段は問わない(後編)
「あとべのっ、ばーーーかっ!!!」
今までついた悪態を全て好きに変換して欲しい、それ位の想いを込めた渾身の悪口。跡部は一瞬目を見開いて、そして珍しく、年相応にくしゃり、と笑った。
「アーン?…バカは松元、テメェだろ」
その笑顔に、見惚れる。じわり、と胸に温かい物が降り積もって溢れて、涙になって流れ出る。
「何も言わずに俺様から逃げようったって、そうはいかねぇんだよ」
逃がしてくれないのが、心を縛られているのが、嬉しくて仕方が無いなんて、どうかしている。跡部が笑ってくれた、それだけでふわり、と心が躍る。
「…行ってきます」
「あぁ、行ってこい。仕方ねぇから、待っててやるよ」
大きく手を振って、踵を返す。ケータイを見てみたら案の定お母さんからの着信の山で、怒られちゃたまらない、と走り出す――
「あとべーっ!!もうっ、お前っ…なんだよほんとにっ…!!」
「あーもう、見てられなかったぜ…焦らしやがってよ」
「告白の返しがバカ、とかほんま、松元…あいつ、サイコーやわ!」
「…んだよお前ら、聞いてんじゃねーよ」
「それなら、こんな場所でイチャイチャしないでよね」
「そーだそーだー、最後の最後まで心配かけてさぁ」
「…お前ら二人には言われたくねぇな、ジロー、守河」
「にしても、跡部なら急遽自分も留学、とか、権力を使って留学ごと無くすとかしそうやと思ってんけど」
「…流石にねーだろ、コイツがいくらぶっ飛んでても」
「…それも考えたが」
「いや、考えたのかよ!!」
「松元がやりたいようにさせてやって、それから俺様の所に来たら、もう離れようなんて考えねぇだろ」
「…うわー、すげー」
「…相変わらず、凄い独占欲ね。ほんとキライ…でも、ありがと、千花ちゃんの事泣かせたままにならなくて、良かったっ…」