【跡部】All′s fair in Love&War
第37章 (閑話)戦いを挑むその前に
それから二日ほどが無為に過ぎていった。留学先のかの街を調べてみたり。初めての洋画を字幕なしで見てみたり。今までのアルバムを見返したり、意味もなく部屋の整理をしたりした。
どちらともとれる自分の振る舞い、どちらを向いているのか、自分が一番分からない。誰かに決めてもらえたら楽なのに、今回ばかりはそれはダメだ、と悟っている。
そもそもどちらも何も、監督に相談しておいて今更辞める、なんて選択肢無いだろう、と自嘲した。
そうして、迎えた運命の朝。跡部に呼び出され、朝焼けの中みっともない程泣き喚いた私は、静かな決意を固めた。
結局、この身を引き留めるのも、この心を焚き付けるのも、あいつなんだ。跡部がその心の内に、静かに燃やす炎に、自信を持って向き合う心が欲しい。跡部の真っ直ぐな目を、臆せず見つめ返す強さが欲しい。
今のまま、ぬるま湯に浸っていては手に入れられないのだ、と、ずっと分かっていて、でもどうすればいいか、分からなかった。今ならわかる。冷静になって、自分の為に、留学するのが一番。
蝉の鳴き声が、段々小さくなっていく。吹き抜ける風が、少しずつ冷たくなっていく。もうすぐ二学期が来て、きっと気付けば年の瀬で、そうしたら間もなく卒業、私は留学だ。
寂しさはいずれ、薄れていく。きっとこの恋慕も、離れれば薄まっていく。それは凄く、途方もなく、寂しい事だけれど。