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【跡部】All′s fair in Love&War

第36章 恋と戦争に手段は問わない(中編)




空港には、いつでも大勢の人間がいる。


今日も果たしてその通りで、その表情は悲喜交交だ。親と手を繋ぎ浮かれて跳ねる子供。慣れっこなのだろう、馬鹿でかいスーツケースを転がす、無表情のビジネスマン。そして、まるで今生の別れの様に、抱き合う男女。

今まで、見送る側も、見送られる側も、幾度と無く経験して来たのに、特別な感慨に浸りながら、ロビーをぐるり、と一望する。後ろではいつも通り――いや、いつもよりテンションが低いいつもの奴等がざわめいている。コイツらが居なかったら、見っともなく走り回って彼女の姿を探していたかも知れない、なんて考える。



「あとべー、松元の飛行機はまだ出てないよな?このまま会えなかったりしないよな!?」
「アーン?その筈だぜ、無駄口聞いてないでお前も探しな」


そして、ふと目をやった彼方から、母親の手を握り、手続きを終えたらしく軽装の彼女が歩いて来るのを漸く見つけた。――お前、何処にいても見つけれるんやな、なんて。忍足に昔からかわれたのを思い出す。

相手もこちらに気付いたようで、両親が揃って頭を下げたから、それに倣うと。二言三言交わした後、両親は先に進んでいき、彼女だけがこちらに向かってきた。


それを認めたが早いか、俺様の横を駆け抜けるように、岳人が飛び出して行き。忍足もそれを追い掛ける。そして松元の元に辿り着き、がばり、と抱き着いた。

少し心がザワつくが、嬉しそうな松元の顔に、溜飲を下げて。手近の壁に凭れ、その様子を見守る。奴等と離れた後は、間髪入れず宍戸と鳳の番らしい。宍戸に髪を掻き乱され、それに拗ねたように頬を膨らまし。今にも泣き出しそうな鳳をあやす様に撫でてやって、微笑む。

日吉が近付いた時には流石に心中穏やかでは無かったが、二人は昨日のことなど無かったかのように、短い会話の後、握手をして、離れた。

そして、ジローと守河と固く抱き合うと、次には樺地に横抱きを強請ったようで、ふわり、と彼女の体は宙に浮いた。俺様に言えばいいのに、なんて、思わなくもないが。樺地はそれすら心得た様子で、迷いも無く俺様の目の前に、その身を置いた。


「…よう、楽しそうじゃねーの」


少しの他意を込めて発したその言葉に、お姫様抱っこされてみたかったの、なんて事もなげに返され、小さくため息を付いた。


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