【跡部】All′s fair in Love&War
第4章 後悔先に立たず、且つ留まらず
「松元、跡部って実は優しいんだよな」
「え?あー…そうかもね」
跡部の話をするだけで、姿を見るだけで、わかりやすく綻ぶ声や表情の訳に気付いてしまった。元々見え見えだったからからかったりしていたけれど、その真意を思いがけず理解させられた。
「お前らさー、あんまケンカばっか、すんなよな」
「え!?何、突然!したくなくてもあっちから突っかかってくんのよ!」
「おい向日、テメェ」
すっかり元通りに戻った俺達が騒いでいると、いつの間にか跡部が目の前に仁王立ちしていた。――元気そうだな、走るか?そう言い出しかねない跡部の表情にそろそろと後ずさる。
「じゃーな、松元っ、跡部っ」
「がっくーん!お大事にねっ」
逃げ出すように走り出す俺に、苦笑する跡部と本気で心配してくれる様子の松元。ごめんな、少し胸が痛むだけで、体調なんて悪くない。でも――
「これが失恋ってやつなら、そんなに悪くないよなー」
そもそも恋だったのかも分からないままだが、俺の初恋らしきものは二日で終わりを告げた。もしかしたらいつか後悔するかも知れない、けど。振り返ってみると、二人はそのまま並んで笑いながらこちらを見ている。今の俺には、これでいいんだと思えた。