【跡部】All′s fair in Love&War
第32章 おわりのそのまえに(中編)
「おれ、あとべと幼なじみだって言ったじゃん」
「そんな事も言ってたわね。よくあんな偉そうなやつと仲良くできるわよね、凄いわ」
この短時間の関わりで、随分嫌われてしまったらしい跡部に苦笑する。でもさ、多分、君の大事なあの子はそんなアイツの事が、好きになっちゃってるよ。そして、跡部も――
「だからさ、きっと。守河と俺と、跡部と松元。これから四人で、仲良く出来るね!俺、明日からがちょー楽しみー!」
無理やり、明るく言い放つ。守河に悟られませんように、と願いながら。守河は大きな目を更に見開いて、伺うようにこちらを見ているから、応えるようににっこり、と笑ってみせる。
暫くあって、守河はまるで諦めたように、観念したかのように、ふぅ、と小さく息をついた。
「…そうね」
「昼飯とかも一緒に食べてさ、放課後も皆で部活に行くんだ!」
俺の方を見ながら、守河はくすり、と笑った。
「それはとても楽しそう、ねぇ、明日からA組に行く時はジロちゃんもついてきてくれる?」
「勿論だしー!!」
まるで諸刃の剣のように、俺の発する言葉は俺自身を傷付けていく。どんどん確信を深めていく。俺の好きな子は、叶わない恋をしているのだ、と思い知る。そして、その恋路を見守っていく、と自分自身に言い聞かせる。
「これから宜しくなっ、守河!」
「こちらこそ、ジロちゃん」
「あ、教室移動の時は起こしてくれよな?」
「ふふ、勿論!」
先程より少し元気になった守河に安心しながら、見上げた夕日が赤すぎて、何故か泣きたくなる。いつか、こちらを向いてくれるだろうか、心ごと。それまで、一緒に居てくれるだろうか。
――何故こんなにこの子に執着するのか、多分誰に聞かれたって答えられない。ただ、顔を見るだけで胸がざわつくんだ。