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【跡部】All′s fair in Love&War

第30章 はじまりのつづき(後編)




タイミング良くチャイムが鳴り響き、自分の席に戻ろうと踵を返す直前。確認した松元の顔には、さっと朱が刺していた。彼女がこんなに屈託なく笑うのも、悪態をつくのも、顔を赤く染めるのも、此処では初めての事だ――俺様が席につくと、はっと気付いたように、周りもがたがたと席につく。


そう、これは牽制――


松元が俺様の事を好きになるまで、ミカエルの言う大人の女とやらになる日まで、傍に居る名目を、周りに見せつけ続ける。好きだ、と告げるのは簡単な事だが、それじゃ意味が無い。あいつから、俺の事を好きだと言わせてやる――







それから、夏の暑い日も、冬の寒い日も、俺達は共にあった。何かの勝負めいた決意は、それからことある事に脳裏を過ぎった。恋愛は勝敗等で計れないのに、凝り固まった考えは、なかなか歩みを進ませない。


――なぁ、お前、俺様のことが好きだろう?


そう問いたくなる場面は、何回と、いや、何十回とあった。それでも、機は熟していないのだ、と飲み込む。安心していた、と言われれば否定はできない。俺に対するそれと、他の奴らに対する態度は明らかに違っていた――周りの奴らに言わせれば、俺の態度もそうだったらしいが。

だからまさか、離れていくだなんて、微塵も思っていなかった。



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