【跡部】All′s fair in Love&War
第28章 はじまりのつづき(前編)
「じぇ、じぇー…!!」
「1-Aと、Jだなんて…端と端じゃない!!」
その時、生徒達のざわめきの中、一際目立つ声に気を取られる。二人の女子生徒はクラスが分かれたことに大袈裟にも見えるほど悲しみ、端と端の列に別れていく。その内の一人は自分と同じく、A組らしい――二列に並ばされる、彼女の隣に立つ。
友人と運命を分かたれた彼女は、目の端を真っ赤に染めても、泣くのを堪えていた。クラスが分かれたくらいで何だって言うんだ、ただ、勉学を共にする集団だろう。あまつさえ、場合によってはライバルにもなる――まぁ、俺のライバルになり得る奴など居ないだろうが。
そこで隣の彼女も成績優秀者なのか、と漸く思い当たり、人は見かけによらねぇな、なんて、俺は今日初めての笑みを浮かべる。そして、自分がただの社交だと割り切っている友人付き合いでは無い、確固たる絆があの友人との間にあるのだろう、と、何処か彼女を羨ましく思った、が。
意外と数学はできるジローがJ組と後で聞き、ぼんやり詰まらない、と思った自分にも、そんな感情があるのかもしれない、と認識させられた。
入学代表の挨拶を問題なくこなすその最中、自分のクラスの列の中、上の空になっているあの女を見つけた。雌猫共が鬱陶しい視線を向けてくる中、ぼーっとどこかを見つめるその目線の先が、何か気になったが、知る由もない、と思考の端へ追いやった。
クラスに戻って、自己紹介なんて子供じみた真似をさせられるその間も、奴はこちらを気にもせず、あろう事か居眠りをしていた。担任教師が目ざとくそれを見つけ、揶揄するとクラス中にそんな雰囲気が伝わる。ただ、彼女の自己紹介は短いながらも堂々としていた――自己紹介如きで噛んだり詰まったりしていたクラスメイト達に馬鹿にする権利があるのか、と苛立った。
その日の夕方、入学式だから、とテニス部の活動が無い鬱憤を晴らすため、気の置けないメンバーでテニスコートに集合した。宍戸と軽く打ち合っていると、フェンスの向こうにあの女の姿が見えてはっとする。何故ここに、と考えながらも高揚した気分そのままに、意地の悪いコースの球を打つと、翻弄されながらも宍戸は食らいついてくる。良い気分になった所でもう一度彼女のいた方を見やる、が、もう其処には誰の姿も無かった――