【跡部】All′s fair in Love&War
第25章 アンコンディショナル・ラブ(中編)
「すいません、突然、混乱させて」
先に戻りますね、と言ってヒヨが立ち上がる。何を言えばいいのか分からず、ただヒヨの動作を見つめる事しか出来ない。
「松元先輩も、早く戻った方がいいですよ。その内お節介焼きが探しに来るでしょうから」
「そう、だね。暫くしたら、戻るね」
まぁ、それを待ってるのもいいと思いますけど――走り去るヒヨからそんな言葉が最後に聞こえた気がした。でも、私の待っている人は、今日は来てくれないみたいなの――
もう涙も出そうにない位、目がじくじくと痛む。目を閉じ、ゆっくりと瞬きを繰り返す。そしてまた、微かに聞こえた足音に振り返る――
「よぉ、何してやがんだ、こんな所で…アーン?」
「…あとべ、」
やっと来てくれた、と何処か安堵する――もう、夕日は落ちる寸前だった。