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【跡部】All′s fair in Love&War

第23章 溜息は雪と溶けて





「ご苦労だった、松元。行ってよし!!」


ぺこり、と一礼。扉のぱたん、と閉まる音、それと同時に、私の三年間が終わりを告げた。



最後の部誌を榊監督に提出して、それで終わり。テニス部の活動だけでなく、音楽の授業や進路指導、様々な部分でお世話になっていた榊監督にお礼を言うと。君みたいな有能なマネージャーを失う事は痛手だな、なんて殺し文句を返された。


「とは言え、君の未来は君が決める物だ。思う存分頑張って来るように――そしてこれまでの働きに、テニス部を代表して、礼を言う」
「そんな、監督…あたしには勿体ない、です」


最高の賛辞だ、と思わずにやけると、気を引き締めるように、とすぐに返されぎゅ、と口を一文字に結ぶ。思えば留学したい、と決めたのは、掲示板に貼られていた奨学生募集のチラシだった。宛先は進路担当教諭で、榊監督の名前もある。相談したい、と榊監督の部屋を訪れた時、彼は少し驚いたような顔をして、しかし真剣にアドバイスをくれた。


いいのか、と尋ねてくる声に苦笑しながら。監督にまでこの思いは知られる所になったのだろうか、なんて考える。

でも、監督。恋に身をやつすなんて、一時の感情に振り回されるなんて、馬鹿げていると思いませんか?――心底では私はそれを望んでいる、のだけれど。彼の理想は、彼の隣に立つべき存在は、そんなに弱くない筈。


勿論、大丈夫です――そう笑って返事をすると、そうか、とそれ以上深堀りして来ない監督はやっぱり皆とは違い、大人の分別で。少し聞いて欲しい、相談に乗って欲しい、なんて弱い自分を封じ込めたんだった――




あと一週間で卒業式の今日、三年生の部活動は休止となる。自主練したりは自由だけれど、どうせなら、と高等部に顔を出す者の方が多いだろう。もう授業も無く、登校も自由だ。つまり、皆が揃うのは今日が最後。


そして、我らが部長たる跡部は、元生徒会長として卒業式の準備に忙殺され、今日は部に顔を出せていなかった。クラスでも、ひっきりなしに訪れる生徒会役員やテニス部の後輩達の相手をしていたし、殆ど話していない。

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